ある日のささやかなお話
その日はやけに職場に『それ』が落ちていた。
はじめは職場の入り口辺り。
事務所へ続く廊下。
部屋の中…。
私は落ちていた『それ』を仕事が始まる前に既に3つ拾っていた。
皆さん、お元気ですか?
私は…まぁ色々と大変ですが、楽しい事を探して生きとります笑
謎めいた落し物…『それ』とは、絆創膏である。
使ったあとの。
皆さんは、そんなに短時間に床に落ちてる絆創膏を3枚も拾った事があるでしょうか。
私はNOです。
この季節になってくると、赤切れなど痛いですよね。
私も何本もの指に絆創膏貼ることもありますが、
開いた状態の絆創膏が結構落ちている事が不思議で、更衣室の同僚に聞いてみたのです。
「私もさっき拾って捨てたよ?」
まだまだ落ちている可能性があります。
やはり、トイレの前や、廊下に落ちていました。
「あ!なにかのトラップか!バナナの皮の代わり…みたいな。」
その日、仕事をしていて、ある部屋に入った時です。
黒いマットが入り口入った所に敷いてあり、ちょっと勢いよくそれに乗った途端、股が避けるかと思った程、両足が開かれる方向へマットが滑るように真ん中から開き、
(おっとっと)
と、なりました。
何が起きたのかと振り返れば、百均で売ってる薄いマットが2個並べられて置いていたようです。
イタズラの類いかと周りを見たけれど誰もいません。
尻もちもつかず無事だったから良かったけれど、そのマットは危険なので、2つ重ねて脇へ寄せておきました。
一応滑り止めが付いているけれど、キレイにワックスしてある床には無効どころか逆に滑りやすくなっているわね。
その部屋の主が戻ってきたので、そのマットの事を説明しました。
この部屋の主は、オリジナルが大好きで、『時短』とか、『裏技』とか大好き。
思いついたり、情報を独自で得ると即、行動に移すタイプの人。
そのマットも、ワックスで床が滑りすぎなので、それを防ぐ方法として百均で考えたらしい。
それならばあともう一歩工夫してほしかったわ。
2枚は危険ということと、滑り止めが売ってるからそれを足せばいいのでは?
と、いけるかどうか分からない提案させて頂いて、その部屋での用事を済ませて帰ろうとした時、さっきまではその床に絶対無かった絆創膏が落ちている……
私はこの部屋の主に顔を向け、心の中ではものすごく期待してしまった。
絆創膏が、今日、やたら床に落ちている訳が、今ここで明らかになる事を。
「ところで、今日、朝からあちこちで絆創膏が落ちているんです。なんでか知ってますか?」
あー、直球すぎた!
もうちょい楽しみたかった!
そう思いつい顔が緩んでしまう。
「え?あー、落ちてましたかー!」
(キタキター!)
「テレビで、滑り止めとして、靴の裏に絆創膏を貼ったらいいって言ってたのでねー、試してみたんですわ。」
(ふむふむ)
「それがねー、気がついたらいつも靴の裏の絆創膏なくなってるんですわー。」
(剥がれてるからね)
「何回貼ってもねー」
「……あきらめへんのかーい!」
私は、そう言って言うまでもなく笑い崩れていた。
そして、その絆創膏を拾って捨ててる人がいる事を告げた。
「ご迷惑かけてすいません」
この人は憎めないキャラのおじさんです。
いつもこうやって素直に謝ってくださいます。
ただ……
近日中にまたやらかしてくださいます。ふふっ